Lee’s Words 李国秀オフィシャルブログ

「サッカーで町内会を作ろう」 李国秀がLJサッカーパークで取り組むコミュニティ作り

───今回はサッカー指導者・李国秀が現在、どのような活動に取り組んでいるかをネットユーザーにご説明していきたいと思います。1999年、2000年とヴェルディ総監督を務め、その後は読売新聞などで評論活動をしてきましたが、それ以外はどのような活動をしてきたのかという点について語っていただければと思います。

私は2003年、厚木にLJサッカーパークという施設を作りました。わかりやすく言うとフットサル場になるのでしょうか。

しかし、始まりは「サッカーで町内会を作ろう」ということなんです。子供、大人、年配の方、サッカーを通して様々な年代の方が集まる場を作ろうという目的があって、Jリーガーや他の様々な方に出資もしていただきました。

「サッカーで町内会」とは何を意味するのか

───「サッカーで町内会を作ろう」と仰る人を初めて見ました。どういうことなのでしょう?

まず、町内会や自治会というものを最近の若い方はご存知なのかな?と思うんです。私は海外で言うコミュニティセンター、あるいはクラブのようなものをイメージしていますが、年配の方には町内会の方が理解しやすいと思ったりしました。

───町内会に限らず、地域の集いのようなものは、なくなりつつあるのでしょうね。

だからこそLJサッカーパークのような施設が必要なのではないかと思っているんです。

私の少年時代は町内会や自治会といえば、お父さんくらいの年代の方やお祖父さんくらいの年代の方もいて、「祭りだぞ」とか「ラジオ体操だぞ」とか、声を掛けてもらいながら街のことを知っていったものです。3世代が同じ場に集まり、お互いの顔を知っていったり、街を良くしていこうとしたりね。

私はそれをサッカーを通してやれないものだろうかと、ふと思ったんです。町内会や自治会の存在感が薄れつつある現在、サッカー場がかつての町内会のような場であってもいいではないかと。

───なるほど。具体的な活動内容としては、どのようなものがありますか?

フットサル場としてレンタルでご利用いただくのはもちろん、小学生向けのアカデミー、中学生向けのジュニアユース、そして遊技場組合の方々にスポンサードしていただき小学生向けのサッカー大会も開催しています。また、少年を指導する方々向けには指導者セミナーをやっていたりもします。

サッカー以外では、8月には盆踊りをやってますね。盆踊りを知らない子もちらほらといたりして、驚きますけどね(笑)。

───盆踊りを知らない子がいるということは、厚木のような住宅街が多い土地柄でも、地域のコミュニティが崩壊しつつあるということでしょうか?

そういう見方もできますね。

もちろん、町内会も盆踊りもやってますよという地域もありますから、一概には言えません。

───李さんは指導者として日本代表を育てた経験もありますし、ヴェルディ川崎総監督時代も低予算ながら2位まで登り詰めたりと、日本のサッカー界に大きなインパクトを与えるチームを作ってきました。いままでのように、いわゆる専業の「サッカー監督」を続けるのではなく、経営者としてサッカーの場、集いの場を提供しようと思ったのはなぜですか?

私はサッカー、もしくはスポーツの価値を高めようと思って生きています。

世界中でスポーツが広く行われている中で、勝ち負けが重要な世界にいる人は実は少ない。

レクレーションでスポーツに参加する人もいれば、スポーツはやらないけど顔なじみと会うためだけにその空間に顔を出す人もいる。多くの人を結びつけるところにサッカー、ひいてはスポーツの価値があると思っています。

サッカーをやる人、観る人、そしてプレーし終わった後に集う場所という3つを兼ね、3世代が集まることができる施設は、日本にはとても少ないでしょう。

私はヴェルディで総監督をやる前から、ずっとそういう施設があったらいいのにと思っていたのですが、ないのなら自分で作ろうと思ったわけです。

───サッカー指導もしていらっしゃるんですよね?

小学生向けのスクール、中学生のジュニアユースで指導します。日常はスタッフが行いますが、私も担当する曜日を決めて行っています。

───李さんは全日空、桐蔭学園、駒澤大学、ヴェルディ川崎を指揮し、いまは小中学生を指導しているわけですから、すべての年代を指導した経験を持つ、数少ないサッカー人と言えますね。

いまの日本の少年サッカーでは、いわゆる「勝ち負け議論」が中心で、「頑張る」「とにかく走る」といった精神論的な文化も根強いんです。しかし、私はサッカーそのものの魅力ってはたして伝わっているのだろうかと、ふと思ってしまうんですよ。

───受験戦争的な、過剰な勝利至上主義ばかりだと、サッカーを嫌いになってしまう子もいるかもしれません。

実際、小学生で全国大会を獲ったチームでも、選手の半数近くは中学生になってサッカーを辞めてしまったという話が聞こえてきたりすると、胸が痛みます。燃えつきてしまったんでしょうかね。

私は小中学生の年代では勝利よりも、積み上げて中学に行かせる、高校に行かせることが重要だと考える指導者ですが、そういう人は多くはない。

子供たちや保護者の方に「サッカーって素晴らしいな、面白いな」「サッカーをやらせてよかったな」と思っていただいて、サッカーの価値を高めていきたいんです。

李国秀とその志に賛同したJリーガーたち

───LJサッカーパークには株主として、当時Jリーガーであった方々(藤田俊哉、長谷部茂利、杉山弘一、大岩剛、山田卓也、平野孝、米山篤志、小林慶行)も名を連ねています。彼らはどういうきっかけで出資したのでしょう?

最初はみんなに連絡をとって、「こんなことやるんだけどどうかな」と説明しましたね。ちなみに「LJ」とは「李とJリーガーたち」という意味です。もちろん、Jリーガー以外にも様々な方に出資していただいてはおりますが。

───LJサッカーパークのイベントには、株主の米山篤志さんや小林慶行さんといった元Jリーガーが来ることもあります。

株主の方々には、私の志に賛同していただいたわけですから、どう恩返ししようかと考える日々です。

バラ色の話をすれば、フランチャイズ的にこういう施設を日本にたくさん作って株主がその長におさまってもいい。もっと生臭く、配当金を出すのも恩返しの一つでしょう(笑)。

あるいはLJサッカーパークはもう10年続いているわけですから、こうして続けていることそのものが恩返しなのかもしれません。

───日本では起業して10年後も営業を続けている企業は10%に満たないと言われていますからね。

プロ選手のセカンドキャリアとして、こういった施設を作るという選択肢があったら、面白いなとも思いますしね。

───たしかに、プロサッカー選手のセカンドキャリアとして、指導者や解説者以外の選択肢はとても少ないように思います。

利益を上げ内部留保金を増やし、資本を大きくしていくのが企業のあるべき姿だとすれば、我々はまだその域には達していないんです。

しかし、LJサッカーパークに関わった人たち、そして厚木近隣の方々から「LJがあって良かったね」と言われることがあるとしたら、それは資本を大きくすること以上の成功と言えるのかもしれません。

───なるほど。次回は少年サッカー指導やLJサッカーパークで開催している指導者セミナーについて、もう少し詳しくお伺いします。

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